こんにちは!和紙写真家の大塚麻弓子です。
いきなりですが、実は私計画を立てるのがとても苦手です。
計画を立てることも苦手ですし、計画通りに動くことも苦手…というかできません笑
毎日同じところに通うみたいなことも苦手で学校やお勤めもできませんでした。。。
世の中に溢れる「成功法則」や「自己啓発本」を読めば、必ずと言っていいほど「長期・中期・短期の目標を立て、逆算して今日やることを決める」といった計画性の重要性が語られますよね。
タイムマネジメントの観点から見てもそんな風に言われます。
私もそれが自分に足りない部分であり、「正しい」生き方だと信じて頑張ってみた時期もありました。
でも、正直なところ、計画を立てれば立てるほど、なぜか息苦しくなって、かえってうまくいかない…そんなモヤモヤを抱えていました。これは仕事でもそうだし、私生活でも同じでした。
そしてついにやーめた!と計画を立てることをやめました。
そんな時に出会ったのが、今日ご紹介する一冊、人類学者・小川さやかさんの著書『その日暮らしの人類学』です。
「その日暮らし」の人類学~もう一つの資本主義経済~ (光文社新書)新品価格 ¥726から (2025/5/27 08:23時点) |
この本は、私たちが「当たり前」だと信じ込んでいる「常識」を根底から揺さぶり、まったく新しい価値観や生き方があることを教えてくれました。
もしあなたが、自分の人生やキャリアに違和感を抱えていたり、何か生きづらさを感じていたりするなら、きっとこの「あなたの常識が揺らぐ旅」は、新しい視点を与えてくれるはずです。
「常識」という名の檻?私たちを縛る価値観の正体

この本を読んで、私が一番「面白い!」と感じたのは、まさに「価値観の圧倒的な違い」でした。
考えてみてください。
私たち同じ「人間」なのに、暮らしている場所や経済的な背景、文化が違うだけで、まるで別の人類…もはや同じ種類のものではないんじゃないかと思うほど、生き方や世界観が異なるんです。
私たちはインターネットで世界中の情報に簡単にアクセスできる時代に生きています。
でも、結局、無意識のうちに「日本の常識」を「人間の常識」として捉えてしまいがちです。
また、同じ先進国に位置する欧米諸国に対する憧れはあり、そちらの例えばビジネス論であったり成功法則であったりは学び取ろうとする姿勢があります。
少なくとも私にとっては、本書が提示する価値観は全く知らなくて、とても斬新なものでした。
1. 未来を計画しない。過去を振り返らない。アマゾン・ピダハン族の「いま」

この本の冒頭で登場する、アマゾンのピダハン族は、僕らが持つ「時間」の概念を根底から覆します。彼らの言語には、未来形も過去形もありません。
数字の概念も、色の概念も無いのです。
神話もなければ物語もない。
彼らが語るのは、ひたすら「いま、ここにある経験」だけ。
数日先の食事の計画すら立てず、文字通り「究極のその日暮らし」をしているんです。
食料を備蓄するということもありません。
なので食べられない日は数日間食べないこともあるそうです。
私たちは、そんな彼らを「貧しい」とか「未開」と見てしまいがちですよね?
でも、彼らの顔には、未来を思い悩んだり、過去を後悔したりする僕らにはない、生きていること自体を根拠とした、揺るぎない自信と喜びが満ち溢れているんです。
物質的な豊かさとはまったく違う、「始原のあふれる社会」がそこには広がっていました。
彼らの生き方には私たちの常識からすると生活の『ゆとり』は無いはずなのに、「ゆとり」や「受容」といった、むしろ私たちが失ってしまっている大切な感覚を思い出させられます。
2. 「最小限の努力」が育む調和。タンザニア・トングウェ族の知恵

タンザニアのトングウェ族もまた、私たちの常識を揺さぶるユニークな価値観を持っています。
彼らは、必要以上に頑張ることをしません。
年間の自分達に必要な食料のギリギリの量しか作物を作りません。
「最小限の努力」で食料を生産し、しかし、収穫したものの約40%を訪問してきた人々に分け与えるんです。
これは、単なる「助け合い」の精神だけじゃないんですよ。
そこには「嫉妬や恨み、呪術への畏れ」といった、僕らには馴染みの薄い、超自然的な世界観が深く結びついています。
突出して富を築けば、周囲から妬まれて、呪いの対象になるかもしれない…だから、誰もが突出しないように「最小限の努力」に収束する。
一見すると「停滞」や「不幸」に見えるかもしれません。
実際、これがアフリカ経済を停滞させている原因だと分析されていることもあるようです。
でも、彼らにとっては、不確実な自然や社会の中で、みんなが調和を保ちながら生きるための「知恵」なんです。
そして、生産に多大な時間を費やさず、余暇を楽しむ。
この「予測しないこと」と「目の前の出来事に対処する」という「Living for Today」の生き方から生まれる知恵は、まさに僕らが計画性でがんじがらめになっている現状への、一つの解を示唆しているように感じました。
3. 「とりあえずやってみる」が生き抜く力に。タンザニアのジェネラリストたち

この「Living for Today」の精神は、遠いアマゾンの奥地だけではありません。
タンザニアの都市部で暮らす人々は、安定した定職がなくとも、様々な仕事を渡り歩く「ジェネラリスト」たちです。
彼らは、特定のスキルを深掘りする「スペシャリスト」ではありません。
状況に応じて柔軟に役割を変え、不確実な市場を巧みに乗りこなす「トリックスター」のようです。
彼らの口癖は「試しにやってみて、稼げるなら突き進み、稼げなければ転戦する」。
これこそが「その日暮らし」の真髄であり、「個で生きる力」の結晶だと感じました。
彼らは常に零細企業の経営者であり、頭の中はいつもビジネスアイデアで溢れています。
それは今の仕事を長期的に続けていくのが難しいという不安定さというネガティブな事情があってのことです。
雇われてもすぐにクビにされてしまう。
雇われ先の会社も3ヶ月先に存続しているのかはわからない。
自分で始めるビジネスも同様です。
なので彼らは常に職を探し求め、自分自身も稼ぐことができそうなスキルに対しても貪欲です。
この逞しさ、前向きさ、そして根拠のない自信。
これって、私たち日本人が少し失いつつあるものじゃないでしょうか?
自己肯定感の低さやビジネスの下手さ、高い自殺率といった社会的問題を解決するヒントが、彼らの生き方にあるような気がしてなりません。
「先進国」の常識を疑う。「借り」と人との繋がりが生み出す新しい社会

さらに興味深かったのは、私たちが「違法」と断じるコピー品や模倣品の世界にさえ、「その日暮らし」の知恵が息づいていることです。
中国の「山寨(さんさい)企業」は、とにかく「とりあえずやってみる、ダメなら次へ」という精神で、既存の製品を模倣しながらも、独自の改良を加え、次々と新しいものを生み出しています。
法的なルールや「知財権」といった「上からのルール」が絶対ではない世界で、彼らは「道義的な合法性」という、また別の価値観で動いています。
これは、対面交渉や直接体験を通じた「共感」や「理解」、そして「駆け引き」から生まれる、生身の人間関係が経済を動かす力になっているんです。
そして、個人同士が疎遠になり、一定の距離やマナーを保つことが当たり前な私たちの社会とは対照的に、タンザニアで目覚ましい発展を遂げているのが、携帯マネー「エム・ペサ」を通じた「借り」のネットワークです。
家族への仕送りや緊急時の助け合いが劇的に便利になった一方で、「無心が頻繁になり、断りづらくなった」という、一見すると面倒な問題も生まれました。
でも、彼らはそれを「少額の贈与への分割」や、友人から借りた金を別の友人から借りて返す「自転車操業」で乗り切るんです。
これは、まるでゲームのように携帯のボタン操作だけで「数字」を動かし、「返さなくてもいい時間」を巧みに創り出すやり方。
無責任に見えるかもしれませんが、実は「誰もが誰かに貸し、誰もが誰かに借りている」という、彼らが元々持っていた相互扶助システムを、デジタル上で再現しているんです。
「つながり」が希薄になりがちな僕ら先進社会に、この**「借り」を回す仕組み**は、「つながり」の新たな可能性を示唆しているように感じませんか?
人間は、みんな「その日暮らし」なのかもしれない

『その日暮らしの人類学』は、僕らの「常識」がいかに限定的なものかを教えてくれます。
私たちは「将来のために今を我慢する」ことが当然だと考えていますが、この本が示すのは、不確実な状況をネガティブに捉えるのではなく、「チャンス」として捉え、好機に飛び込む大胆さこそが、真の「その日暮らし」の姿だということです。
私たちは皆、多かれ少なかれ「Living for Today」です。いつ誰が予測不可能な状況に陥るかはわかりません。もしかしたら、未来に備えようと焦る僕らの心こそが、「その日暮らし」への恐れを抱いているのかもしれません。
この本は、そんな僕らに、「その日暮らし」の知恵、遊び心、そして新たな可能性に目を向けることで、もっと多様で豊かな生き方ができることを示唆してくれます。
計画通りにいかなくても、生きづらさを感じていても、きっと大丈夫。

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この旅が、あなたの新たな視点を開くきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。
日本の常識の中で生きていると苦しくなってしまうあなたのお役に少しでも立てれば幸いです。
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